『嫌です。もう貴方に話すことはありません…。』

彼女に言われた言葉が、頭の中で鳴り響く。
あれからもう、1週間が経過した。その間、彼女とは一言も話していない。
俺と影石愛が付き合っていたことが何故か彼女に知られていて、彼女は俺がまだあいつのことを好きだと勘違いしていて、動揺した俺は、彼女を怖がらせるようなことをしてしまった。
俺は、一体何をしているのだろう…。
窓の外を見つめる。ガラス越しに、帰りの支度をしている生徒達が見えるが、まだ帰る気にはならない。
今日も、部活があれば良かったのに。
部活をしている間だけは、嫌なことも、不安も、悲しみも、全て忘れられる。

「はあ…。」

自然と小さな溜息が出る。
最近、1年の時から彼女のことが好きだったと気付いて、自分なりに距離を縮めようと努力した。
でも、効果は何も無かった。
やはり彼女は、俺なんかじゃなくて──

「広〜大っ！どうしたの？辛気臭い顔しちゃって！」

聞き覚えのある、女子の声で我に返る。気がつくと目の前には、影石愛が立っていた。