「真島くん…!」

私は、佐倉くんを保健室に連れて行くと、直ぐに体育館へと戻ってきた。まだ舞台は始まっていないみたいだ。なんとか間に合った。

「遅いぞ。始まるまであと5分だ。」
「ごめんなさい…。」

この答えを選んだことを、きっと真島くんはよく思っていないだろう。

「…あの、怒ってますか?」
「別に。」
「でも──」
「今は舞台に集中しろ。」
「はい…。」

そうだ。真島くんがどう思っていようと、今、最優先すべきことは、舞台に集中することだ。

「…大丈夫か?なんだか顔が赤い気がするが。」

顔が赤い…。それはそうだ。先程、あんなことがあったのだから。平常心でいるなど、無理に等しい。

「え、えっと、き、緊張してるからですかね。それと、ここまで走ってきたので。」
「そうか。」

その瞬間、真島くんの顔が近づいてきて、額と額が触れた。

「っ…!!」
「ん。熱は無いみたいだな。」

なっ…。熱を確認するだけなら、手を額に当てるだけで良いのに…。
こんな手段を使うなんて…、こんなの…、少女漫画の世界の人しかやらないと思っていた。
顔が離れて、真島くんの方を見ると、目が合った。

「やっと俺の方、見てくれた。」
「へっ…!?」
「ほら、もうそろそろ出番だぞ。」

真島くんにそう言われ、私は舞台へと登場する準備をした。