「嫌だよ。」

佐倉くんが、しっかりと私の目を見つめながら、そう言った。

「キスなんてしないで。…お願い。」

心臓の鼓動が早くなるのを感じた。

「ど、どうしてですか…?」
「好きだから。」
「えっ…!?な、何を──」
「湖川さんのことが、好きだから。」

さ、佐倉くんが、私を…!?
そういえば、この前、ももちゃんと陽芽がそんなことを言っていたけれど、でも、私はそれをほとんど信じていなかった。
私のことを好きになる人なんて、そんな人、いるわけがない。

「あ、えっと…、と、友達として、ですよね…!」

うん。そうだ。友達としてに決まっている。

「違うよ。」
「えっ…!?」
「誰にも渡したくない。ずっと一緒にいたい。手を繋ぎたい。抱きしめたい。キスをしたい。そういうレベルで、好きなんだ。」

ゑ!?!?
キ、キスしたいとは、い、一体…!?

「ねぇ、キスしていい?」
「えっ…!え、えっと…え。じょ、冗談はやめてください…。」
「冗談じゃないよ。」

そ、そんな、嘘…。

「大好きだよ。」

そう言うと、佐倉くんは私の頬に手を置いた。そして、彼の顔が、ゆっくりと近づいてくる。
私はパニックになり、目を閉じる。
まさか、本当にキスを…!?
いや、落ち着くんだ。そんなわけがない。この前、真島くんの顔が近づいて来た時も、キスではなかったではないか。
人は、そう簡単にキスをしない。これもきっと何かの──