「保健室の先生は、来ないのですか?」
「来たけどね。僕が何も怪我をしていないと知ると、帰っていったよ。」

そんな…。こんな状態の生徒を放っておくなんて。
いや、保健室の先生が、そんなことをするはずがない。だから、もしかしたら、先生が来た時には、まだ佐倉くんにお酒が回っていなかったのかもしれない。

「僕は、お酒を燃やしている人達を、注意したんだ。それで、巻き込まれちゃったみたい…。」

佐倉くんが薄ら微笑んだ。その頬はほんのり赤い。
外見から、佐倉くんがかなりお酒に酔ってしまっていることが分かった。

「どうして、そんなこと…。」

わざわざ注意をしなくても、先生を呼んでくるなど、他のやり方があったはずなのに。

「自分の意思で行動したんだよ。」
「自分の意思…?」
「うん。だから、後悔はしてない。これも全部、湖川さんのおかげ。」

私のおかげ…?そんな。私は何もしていない。

「ねえ、湖川さん。もっと近くに来て。」
「へっ…。」

私は、戸惑いながらも、衣装を汚さないように気をつけながらしゃがみ、佐倉くんに近づいた。