司祭ヴァレニウスが肩をとんっとついた。今日はすぐに目が覚めた。ケルトゥリの「務め」が終わったのだ。
「巫女様おかげんはよろしいですか?」
 ケルトゥリが冷たくなった自分の左腕を確かめるようにそっと右手を当てた。
 ケルトゥリが何も応えないでいると、まだ若い巫女の世話係ヴァレニウスは確かめるように顎に指をかけ上向きにさせ、頬に触れた。
 ケルトゥリは知っていたこの一族が自分のことを知ってここに閉じ込めたことを。医術の覚えがある彼は自分が死なないように見張っているのだ。ケルトゥリの血を絞り取りすぎて呼吸が止まってしまわないように!・・・
「約束よ・・。早くあの子に会わせて!」
 ヴァレニウスは助手に器具を片付けさせると、その声と同時に下がらせた。
 ヴァレニウスは助手にケルトゥリの血だけは触れさせなかった。
「本当は困っているんですよ。巫女様、生まれたばかりの弟を誘拐させるなんて、ね」
 その小瓶をいたずらに弾いた。
「一人にしておけないわ」
「まさか、お父様とお母様と一緒ではないですか?」
「・・・・・・」
「さぞや喜びの渦中であったはずですよ」
「やめて、あなたが言いたいことはわかってる・・!」
「あなたを渡した、報償はつきかけていた、家庭は崩壊寸前。また、子供は売れるかもしれない。そういう喜びですよ」
「・・・・・・」