「わかっている。だが、ヴェルヘルム。成績について何もいったことはなかった。いや、技術のことなどどうでもいいことだが、教官から何か言われたことがあるのではないか?」
「え?」
「そんなことで人を斬れるのか、と」
「・・・それは・私もこの国の男ですから人を斬れというなら逆らうつもりはありません。でも、本当にそうすることが正しいのか」
「刃を向けられたら、そんなことを考えているひまはない」
 ヴァレニウスは溜息をついた。
「私も帯刀することにした。おまえも気を抜くな。昨日夢に見たろう」
「え? ええ、それで気持ちが悪くて、夢の中で倒れて自分の血の味が口に満ちていた。なんだが目覚めてもすっきりしない。でも、まさかここでそんな眼にあうなんてことはないでしょう・・はは」
「私も見た。おまえは、傭兵として戦場に行くんだ。敵ははっきりしてるだろう。おまえは訓練された戦士なのだし」
「はい・・では、あさってには宿舎に戻りますので荷物をまとめてきます」
 ヴェルヘルムは、逃げるように食堂を出て、中庭の石段に腰をかけ、空を仰いだ。