「わかった。今説明する。以前から第三王子であるユリウス殿下から秘薬を求められていたが、病気の治療に使用するとのことで丁重にお断りしていた。しかし、従者を伴った王子に押入られてしまった」
「それで思い切り斬り付けられたわけだ。・・・それでまんまと血を奪われて、王子の婚約者は悶死したわけか」
「死体はすぐ開けてみよう。高貴な方だし明日にはお返しせねばならない」
「その前に二つやることがある。まず、着替えてこい。それからヴェルヘルムを部屋に戻さないと。起きた時は夢だと思うだろうな。綺麗な顔にも大きな傷ができていたのに、肉がはぜてな。もうこんなに整っている。若いせいが回復が早い」
「・・・・・」
「心配するな(、不死身じゃない)。それとも残念か? こっちの弟なら子供を作れるからな。そうなればもっと搾り取れるぞ」
「錬金術か何かででもっと薬を増産できないか?」
「簡単にいうなよ。俺はただの薬師だ。あんたがどこからか魔法使いでもつれてくれば話は別だが。今はせいぜい使用量を減らすしかない。傷を負う前に措置しておけば量は減らせるが効いてる間に必ず傷を負うわけでもない。その分は無駄になるわけだ。あるいは、どれだけ傷を負っても効くのは一定時間だけ。しかし、そうしておけば、そもそも深い傷自体ができない。そして、先に措置しておける人間は限られる」
「完全に健康な肉体を持つものだけか」
「そうだ。それが無理なら傷を負ったときに病巣を避けて塗布するしかない。しかし、そうすればあっという間になくなってしまうわけさ。薄めて使う余裕もなかった」
 ティブリンは、ヴァレニウスに空になった瓶を投げた。今、ヴェルヘルムの治療に使い切った瓶だった。
「ここでは命は軽いもんだ。でも、この男を死なすわけにもいかないんだろ? わかってるからここに入れて処置したんだ。怒るなよ」
 ヴァレニウスは、ヴェルヘルムの治癒の状態が動かしても問題がないことを確かめ、抱きかかえようとした。
「・・ちょっと」ティブリンは静止した。