幼なじみが推しすぎる




小さい時のレイは見た目のことや日本語が上手く話せないことをからかわれて泣きべそかいてることもあった。

なにも言い返さず、目に涙を溜めて堪えてるレイの姿がいたたまれなくて、わたしが庇ってあげたこともあった。


それが、いつの間にかレイに対する周りの反応が変わっていった。
勉強が出来てカッコイイ!足が速くて素敵!王子様みたい!って急に持て囃して、わたしの入る隙間なんてなくなってた。



大好きなレイをずっと独り占めしたかったのに、みんなにとられてしまったようで虚しくなったんだ。


それで何となく素っ気ない態度をとったり通学時間が被らないようにズラしたり、レイとは関わらないように段々距離を置いていった。




廊下ですれ違っても、わたしは見ないようにしてたし挨拶すらしなくなった。


.......本当はそんなことしたくなかったけど、変に意識しちゃって後戻り出来なくなってしまった。



そして、今に至る。
だいぶ拗らせてるわたしに、


「もし彼女出来たらどうすんの?立ち直れないでしょあんた。」


友達のりっちゃんに釘を刺されてしまった。


「.........やめてよそういうこと言うの.........泣くよ?」


「いやいや。普通にありえる話だからね?てか、今まで居なかったのが寧ろ不思議だわ。クソほどモテるのに。」


確かにりっちゃんの言う通りだ。
あれほどモテるのに彼女の噂ひとつ立たないレイが不思議でしょうがなかった。



思えば小学生の時から、レイが誰々に告白されたって話題は数しれなかったけど、付き合ったって話を聞いたことがない。

まあそのお陰でわたしのメンタルは保たれてたようなものだけど。


「もしかして、本当は彼女いたりして。」


意地悪そうな顔してりっちゃんがそう口にする。


やめてくれ。そんなこと言うの。
.........だって普通にありえるもん。


レイは周りにそういうことをベラベラ話すような人じゃないだろうし、隠してる可能性だって十分にある。


頭を抱える込むわたし。



「双葉さぁ、、いい加減行動しなよ?逃げてばっかだと後悔するよ?」


りっちゃんの言葉がグサッと胸に刺さる。


いつまでわたしはこうなんだろうと、自分でも思う。



朝のホームルームが終わって、授業の準備をしようと鞄を開けた時、あることに気がつく。

……あれ?

お弁当がない……?


ガサゴソとリュックの中身を漁るが、お弁当が見当たらない。


よくよく考えたら、なんだか今日はリュックが軽いなーなんて思っていたんだ、、


やってしまった。


恐らく、家のリビングのテーブルの上に置きっぱなしになってるいるはず……。




今日は購買でパン買うしかない、、、



そう思っていた矢先のこと、



コトン。


わたしの机の上に置かれた見覚えのあるお弁当入れ。



.........え!???


顔を上げると、レイが立っていた。



な、な、なに??なんで??


驚きすぎて、固まってしまった。



すると、


「お弁当、お母さんに渡して欲しいって頼まれた」



表情ひとつ変えず、レイは綺麗な顔してそう淡々と話すとそそくさと行ってしまった。




「.................え?」



突然のこと過ぎて、思考が追いつかない。



待て待て待て。
うちのお母さん!!!



よりによってなんで、レイにそんなこと頼むのよ!!!恥ずかし過ぎるんだけど。。。



てか、せっかくレイがお弁当持ってきてくれたのにさ〜ありがとうの一言ぐらい言えよ自分!!



久々に話しかけられてレイの顔を間近に見れたことが正直嬉しくて舞い上がってる。



相変わらず.......めっちゃかっこよかったなぁ〜.......



今日は一日ずっとその事ばかり考えていた。レイが届けてくれたお弁当も何だかいつもより一層美味しく感じれた。(絶対気のせいだけど)



お弁当忘れたことを知られたのは恥ずかしかったけど、お母さんには感謝すべきかもしれない。


そう思いながら、家路に帰ると自宅の玄関先に誰か立っている。




あれ?もしかしてあの後ろ姿…


「ただいまー……」


「わ〜ふたばちゃーーーん!久しぶりね!」


ハイテンションで勢いよくわたしに抱きついて来るその人。



「レ、レイママ久しぶりです……」

急に抱きつかれて、気圧されるわたし。


そう、この綺麗な美魔女はレイのお母さん。
本当にレイとは似ても似つかない性格で明るくていつもハイテンションなレイママ。


「すっかり女子高生ね〜制服姿かわいいわァ♡」

「そ、そう?ありがとう」


いつもこうやって褒めてくれるから、どんな反応していいのかいつも困ってしまうけど嫌な気は全くしない。笑

しかも、性格は似てなくても顔はやっぱり親子だけあってレイに似ているから益々照れてしまう。


「レイママも相変わらず綺麗で変わらないね」

「何言ってんのよ〜シワシミ増えて大変なのよ?隠すので精一杯でやんなっちゃうわ」


いやいや、ホントにこの人年取らないと思うんだけど……。
わたしが小さい時から全然見た目変わらないし。



玄関先でそんな会話をしていると、家の中からうちのお母さんが出てきた。


「あらおかえり双葉。あ!そういえばあんた今日お弁当忘れて行ったでしょ?」


帰ってきて早々その話題を出された。


「それでね、朝ちょうどゴミ出しに家出たらレイくんに会ったからねお弁当届けてもらったのよ〜もうこの子ったらホントそそっかしいんだから!ごめんね〜なんかレイくんに迷惑かけちゃったわ」

「全然迷惑なんかじゃないわよ〜いつでも使ってやって!また同じクラスになったって聞いて嬉しかったわ〜双葉ちゃん仲良くしてあげてね、相変わらず無愛想な子だけど」


仲良くか、、
母達はわたし達があまり話をしてないことを知ってか知らずか……。


わたしはレイママの言葉に曖昧に笑って返すことしかできなかった。




すると、

「ていうか、たまにはうちにも遊びに来てよ双葉ちゃん!最近全然来ないから寂しかったのよ?」


レイママはいじけたようにそう口にした。


いやいやいや……行けるわけないじゃん!
レイがいるのに!!
そりゃ子どもの時は、なんにも考えずに遊びに行けたけど、今はちょっと難しいよ……


「で、でもレイママお仕事忙しいんじゃないの?」


何となく話を逸らそうと、そう言ってみた。
レイママは、美容系の会社に勤めていて結構キャリアのある人だ。
仕事で家を空けることもよくあるだろうし、レイが1人で家に居るってことの方が多いんじゃないだろうか。


「忙しくてもちゃんと休む時は休んでるのよ?ほらもう歳だし、昔にみたいにバリバリとは行かないのよ〜」

「そ、そうなんだ」


まあ……そういう事情もあるだろうけど、