泣くのを我慢してた



「…泣けば?」



「…泣かない…」



そんな

強がって…



ーーー


梨花さんにキスした



そんな

惨めな顔すんなよ



誕生日なのに…



「帰って…」



「オレ、帰んない…」



ーーー

ーーーーー



「…りっくん!」



ーーー



「や…」



ーーー

ーーー



「りっくんじゃなくて…
男の名前呼びなよ…」



ーーー

ーーーーー



「ん…」



ーーー



「いいよ、別に…
オレじゃないでしょ
今日、会いたかったの…」



ーーーーー



「呼べば…?彼氏の名前…
オレも、呼んでやるから…
梨花…って」



ーーー



さっきスマホ越しに聞こえた


「梨花」


男の声



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ーーー



「梨花…」



ーーー



「や…だ、…りっくん…」



「呼んでよ!早く!」



ーーー



「ん…」



ーーーーー

ーーー


ーーー



「呼んで…梨花…」



ーーー

ーーーーー



「ん…アツシ…」



アツシって言うんだ…


この人の彼氏



ーーー



いつも心の中は

その人だった?



オレとキスした時も

オレが無理矢理した日も



りっくん…て

笑ってても



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「梨花…」



「…アツシ…」



この声聞かせたら

ここにすぐに来る?



この人

迎えに来てくれる?



付き合ってんなら来いよ!

誕生日なんだって



オレに

相手させんなよ!



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ーーー



こんな虚しい気持ちで

梨花さんとしたくない…



梨花さん

ごめん

好きな人、いたんだ…



無理矢理して、ごめん



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ーーーーー



「梨花…」



「アツシ…」



そう呼ぶ梨花さんは

悔しいけど



いつもより綺麗だった



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「…りっくん…」



え…



「りっくん…ケーキ一緒に、食べて…」



「オレ…?」



梨花さんがオレの身体を引き寄せた

肌が密着して



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梨花さんからキスしてくれた



「梨花…さん…」



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「誕生日…おめでとう…」



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「りっくん…ありがと…」



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