「あ、ありがとう相沢くん」
まだ身動き出来ない体制のままだが相沢くんにお礼を言った。
「あ、ごめん、伊藤さん」
抱き寄せた体制の私に気づくと慌てて肩の手を離してくれて、やっと自力で動けるようになった。
「ううん。困ってたから助かったよ。
………山本と知り合いだったんだね?」
「あー…、うん。伊藤さんも?」
「私は中学の時に同クラだったから。でも山本は私の事なんか全然覚えてなかったけどね。今、初めてまともに話したくらいだから覚えてなくても仕方ないけど」
「そうなんだ?」
「うん。……あ、もしかして途中から話聞いてた?」
「……なんで?」
「だって相沢くんの家、通り越してるよね?」
正確な相沢くん家は知らない。
けど以前、休憩中にパートさん達と話しててなんとなくの場所はわかるからそっちの方を指差した。
「あ………うん。……ごめん。山本先輩が伊藤さんを追いかけたとこから見てた」
「そっか。でも助けてくれて本当にありがとう。それじゃまた明日ね」
バイバイと手を振って私は自宅へとペダルを踏みだした。