立ち上がった私の隣に相沢くんが立っていた。
けど。
「………咲季ちゃん?」
隣の相沢くんではない声が私を呼んだ。
その声に、不用意に振り返って青ざめた。
「咲季ちゃん!?なんでこんな電車に乗ってんだ?」
いつの間にか先頭車両から戻ってきた金田に見つかった。
「…………」
完全に見つかってしまってはもう為すすべが無い。
というより恐怖で瞬き一つ出来なかった。
「咲季ちゃんなんでバイト辞めたんだよ。もしかして引っ越したのか?だから電車に乗ってるのか?」
何か言いたいのに金田の声が頭の中に響いていて何も考えられない。
「咲季ちゃん、帰るなら俺も一緒に家行ってやるよ」
そう言って金田の手が私を掴もうと伸びてきた。
けど、その手が空を掴む。
その様子を私はただ呆然と見ていた。