同じ電車内に金田がいる。

その事実に息が詰まる。



どうしよう、どうしよう、どうしよう。



見つかったらどうしようっっ!!!



持っていたスマホが、滑り落ちてカシャンと音を立てて床に転がる。



その音を聞いて我に返り、慌てて拾おうとしたら通路を歩いてきた男の人に拾われた。



「咲季ちゃん!」



拾ってくれたのは上杉くんだった。



「良かった!晃司の部屋のシフト見て、もしかしたら咲季ちゃんも今日が登校日なのかもと思ったから見に来たんだ」



スマホを渡してくれながらこの前と同じように気さくに話しかけてくる。



「咲季……」



上杉くんの後ろに立つ相沢くんは私の名前を呟くが、声をかけるかどうか悩んでいるみたいだ。



そんな事に気付かないフリをして上杉くんと話しをする。



「咲季ちゃんはいつも帰りは一人なの?」


「同じ方向の友達いないからね」



同じ方向どころか友達すらいないけどね。

上杉くんに笑いかけながら返事する。



「じゃあ隣座っていい?」


ドア横の二人掛けの座席を一人で座っていた私。

横に置いていたバッグを抱えて立ち上がる。



「どうぞ、座って」



上杉くん達二人に席を譲ろうと立ち上がったが。



「え〜?隣に咲季ちゃんが座らないなら意味無いんだけどなぁ」



「え〜?せっかく譲ったのにぃ」



上杉くんの口調を真似て茶化していたから気付かなかった。