「山本先輩」



唐突に第三者の声が聞こえて思わず振り返った。



相沢くんだった。



私が相沢くんだと認識した時には
私と山本の自転車の間に無理やり自転車を捩じ込んできた。



「人の彼女に手を出さないでくれます?」



自転車に跨がったまま相沢くんは私の肩を抱き寄せて嘘を吐いた。



「相沢くん?」



かろうじてハンドルを持ったまま足を踏ん張ったから自転車は倒さなかったけど、肩を抱かれた私の顔は相沢くんの胸に密着する体制になった。



「あれ?お前……の彼女なの?」


「そうですよ。だから彼女も先輩の事知ってたんですよ」


「なんだ、そっか。……じゃあヤバいな。悪ぃな、今の忘れてくれ、な?」


「……言いませんよ。だからさっさと帰って下さい」


「わかった。彼女ちゃんしつこくしてごめんな〜。じゃあな〜」



私に一声かけた山本はあっさり帰って行った。