「咲季?」



相沢くんに声をかけられてハッとした。



それでも頭の中から山本弟くんの言葉が鳴り響いてるままだ。




「ごめんっ!もう戻るね」



自分の思考を制御しきれず突然立ち上がってその場を去ろうとした。



けれど、すぐに相沢くんに腕を取られる。



「咲季?」



椅子に座ったままの相沢くんの顔が不安げに私を見上げている。



それを一瞬だけ見てすぐ顔を背ける。



「ごめん。なんか今は無理」



そう言って強く腕を上げ、相沢くんの手を振り解くと走って控え室を飛び出た。



そのまま女子更衣室に駆け込んで崩れ落ちた。





自分がこんな妄想するなんて……。

恥ずかしさのあまり、しばらくその場で身を小さくしているしかなかった。