「ねぇ、拓海くん覚えてる?」
アルバムを引っ張り出してきた私はソファに座り、それを開いてみていた。
「……ん? 咲良なに、そんな古いのを引っ張りだして」
キッチンからこちらを覗く彼は、私の声に反応しながら沸いたお湯をマグカップに注いでいる。
彼は、湯気がふわふわしているマグカップを2つ持って私のいるソファの前のテーブルに置いた。
「ふふっ、懐かしいでしょ? これ、出会った頃のやつだよー!」
「本当だ、懐かしい……」
***
今から5年前─︎─︎私は、悩んでいた。私は小さな時からなんだって記憶に残る。コピーでもしたかのように頭の中にはっきりと記憶されてしまうのだ。
それは、恋愛でも発揮してしまっていた。
記念日だって、デートで行った場所、日付、彼の表情まで今も思い出せる。そのせいで、いつも振られてしまう。
「咲良(さら)別れよう。」
あぁ、やっぱり。これ何度目……?
すぐにわかる。15回目。きっと、次の人はわかってくれると思って今回、付き合ってみたけど……ダメみたいだ。
15回も言われてるのに全ての情景が浮かぶ。嫌な頭だなぁと思うけど、仕方ない。
「……なんで、ですか?」
「だって気持ちわりーもん、お前」
「……っ」
「なんでも覚えててさぁ……。だから、別れてよ。そういうの無理、重いし」
そんなこと言われたら私、頷くしかないじゃん……。だって自分でも自覚はある。気持ち悪い、って。
もう恋なんて、したくない。もう、辞めよう。傷付きたくない。
……そう、思っていたのに。なのに、どうしてかな。もしかしたら、だれか、こんな私でも見てくれるんじゃないかって思ってしまう。
「佐伯拓海です! ……清水咲良さん、好きです。付き合ってください!」
この人、確か。同じゼミにいる人だよね?
はぁ。もう、何回も同じこと繰り返しているのに……彼の真剣な瞳を見てしまうと断れなくなる。
こんな私を愛してくれるかもと期待して頷いた。
「ほ、本当!?」
「う、うん……」
「う、わっ! めっちゃ嬉しい!!」
1人で盛り上がる彼を見て、なんか可愛いなって思った。
私、清水咲良(しみず さら)。大学2年生。
本日、16回目の……恋愛始めます。