「杏子?」
「富永、何してんの?」
富永がだらしなくポケットに手をいれて
歩いてきた
「お前こそ」
「サボり。富永も?」
「自習になったから」
「そう。あ、アドレス登録してくれた?」
「ああ忘れてた。それより、誰さん?」
富永は先輩を見た
「こんにちは。3年の安西です。杏子の友達かな?」
「彼氏です」
「何言ってんの、馬鹿!」
私は思わず大声になった
「彼氏?ははっ。冗談はやめてくれよ」
「あんたはなんなんだよ」
「僕は杏子の彼氏ですが?」
富永は少しむっとした
「お前、彼氏居たのかよ」
「…まあね。あんたはいつでも、すぐそうやって、彼氏ですって言うね。あの時も…」
富永は先輩のほうに向き直った
「杏子の彼氏さん?こいつ、やめといた方がいいっすよ。馬鹿だし性格悪いし、ブスだし」
「ブスって何よ」
「ほんとのことだろ」
先輩が一歩前に出た
「君、」
「先輩!」
私は先輩の言葉を遮った
ここで喧嘩されても困るし
みんなに色々聞かれるのは面倒だ
「いいですから。富永も、冗談で言ってるんです。私はいいですから…すみません」
私は富永を少し睨んだ
「富永も人のことブス呼ばわりしないでよね!先輩、もう行こう?」
私は先輩の手を引いて、階段を下りた
ズカズカと、早足で
「すみません先輩、私、ハンカチ落としたみたい。屋上見てくるから、先輩はもう教室に戻っててください」
「え、あ、」
私は走って屋上まで戻った
屋上では富永が缶ジュースを飲んでいた