朝日が差し込む反対側の席の方がステキに見えたけど、壁を背にした方が落ち着く気がしたのは、テーブルについている人達が……みんなカップルだったから。
私が気にしているから目につくだけ、とか、今はちょっと神経質になっているから、とか、料理をとる間もいろいろと自分に言い聞かせてみたけれど、ここまで明確に事実をつきつけられてはどうしようもない。
「そうよ、そう。さびしい独り身なのは私だけ」
日本語がわかる人もいないだろう、と、香耶はせいいっぱいの強がりの言葉を口に出してみる。
「……でも、別にいいもん」
目の前に彼氏がいたら、絶対にしないであろう大口を開けて、スクランブルエッグをパクつく。
「1人だって……別に楽しいし……ん?」
続けて口に入れたものに意外な甘じょっぱさを感じて、香耶は首をかしげる。
今、口に入れたのは多分、チリビーンズのようなものかと思ってお皿に乗せた……豆の煮たやつ。
出汁の味はしないけれど、肉じゃがみたいな、豆の甘煮みたいな、懐かしい感じの味だ。
なんだか少しだけ、母の作った料理が恋しくなってしまう味付け。
これはオーストラリアの料理なんだろうか?