どうやら、これは上から差し込むタイプのトースターらしい。

「なるほど……」

思わずつぶやいてしまうと、男性は満足そうに頷いて、ローラーに乗って手前に出てきたパンをお皿に乗せ、じゃあね、というように笑って去っていった。

……なんていうか……男前だ。

さりげない親切……おじさん、ありがとう、ステキです。

お皿に乗せていたパンを見よう見まねで機械に差し込み、トーストされて出てくるのを待っている間に、会場を見回す。

ちょうどまんなかくらいのテーブルに、男性と、奥さんらしい金髪の小柄な中年女性が座っていた。

パンの乗ったお皿は2人の間に置かれ、女性がパンを選び、自分のお皿に運ぶのを、男性はにこにこしながら見ている。

奥さんが何か言うと、男性は明るくハハッと笑った。

「幸せそう……」

あの中年男性がタイプだとか、どうにかなりたいだとかいうわけではないけれど、いつか、ああなれたら、という理想の夫婦に思えた。

「帰ったら、誰かいい人と出会えるかもしれないからね!」

落ちかけた気分を強引に上げた香耶は、出てきたパンを拾い上げ、飲み物を注ぐ。

空いている席は他にもあったけれど、なんとなく、目立たないような端のテーブルへ座った。