持って行って、作り物だったら恥ずかしすぎるので、リンゴはとりあえずスルー。
料理の最初は、卵と、ソーセージやベーコンなんかの加工肉ゾーン。
日本の朝食ビュッフェで見るような、オモチャみたいな小さなオムレツは見当たらなくて、ゆで卵とスクランブルエッグがフタ付きの銀の入れ物に入っていた。
こういうタイプのものは日本にもあるので、香耶も戸惑わずに、ひとすくいのスクランブルエッグを取り、小鉢のケチャップとカリカリに焼かれたベーコンを添えた。
次に緑と赤紫の混じったレタスと茹でたインゲンにドレッシングをかけ、最後に小さなパンを選ぶ。
パンの横に置かれた銀色のパスタマシーンのような機械を見て首をかしげていると、後ろからやって来た背の高い中年男性に何事か話しかけられた。
もちろん英語なので、何を言っているかはわからないけれど、不思議そうな香耶の顔を見て、口元をゆるめた中年男性は、ひょいと小さな食パンを色違いで2枚つまみ上げると、その機械の上部にある隙間へと差し入れた。
香耶が男性の顔をうかがうように見上げると、にこっと笑顔を返される。
そうする間にゆっくりと吸い込まれていったパンが、機械の裏側から下へ降りてきて、赤い光に照らされ始めた。