来た道を戻ればホテルに着くわけだから、帰り道も安心だ。

やけに早く色の変わる信号も小走りでクリアして、無事にホテルに着いた香耶は、ふう、と大きな息を吐いた。

さっきまでの塞いだ気持ちはなくなったけれど、やっぱり知らない街では気が張るせいか、すぐそこで買い物しただけの数十分が大冒険のように感じてしまう。

「はぁ……なんか疲れちゃった」

スーパーでは感じていた空腹感も、いつの間にか引いてしまっていて、香耶はテーブルに並べた食べ物をしばらく眺めてから、オレンジジュースとラップサンドを冷蔵庫に入れ、お風呂にお湯を入れることにした。

日本の自宅アパートにいる時もそうしていたけれど、なんだか気分がモヤモヤしたり、落ち込んだ時には、ゆっくりお風呂に入るのが何よりもいい。

お気に入りのバスソルトか、入浴剤を入れて、音楽なんかもかけたりして。

照明は消してしまうか、ちょっと小さめのだけをつけて、トーンダウンした方がリラックスできる。

ゆっくりお風呂に入った後は、しっかりと丁寧に最近サボっていたお手入れをして……

自前のものもあるけれど、ここのホテルのアメニティはどんな感じかな、と、バスルームに入った香耶は、あれ?と中を見回した。