本当は、お肉かお魚も欲しいところだけれど……日本では見慣れたお惣菜やお弁当のコーナーが見当たらない。
オーストラリアの人は、お弁当を食べないんだろうか……?
奥の方には、魚や肉の入ったショーケースが見えたけれど、キッチンがなければ、それを料理する術がない。
残念だけれど、あきらめるしかないだろう。
香耶は後ろ髪をグイグイひかれながら、ひとり自分を納得させるようにつぶやく。
「ま、調味料とか、食器もないわけだしね」
旅行に行けば、基本的に外食になるのは、日本でも同じこと。
そう自分に言い聞かせて、香耶はレジに並ぶ。
カゴの中身に張られたシールを計算して、10の数字が印刷青い札を1枚取り出す。
これが、多分10ドル札だから、日本円で言えば、1,000円ちょっとくらいかな。
小銭はよくわからないので、とりあえず、しばらくは札を出すことにしよう。
レジのおばさんに差し出すと、おばさんは一瞬、おや?という感じで香耶を見て、1の数字が印刷された札と小銭を何枚か渡してくれた。
エコバッグの類を持ってきていなかったので、手持ちのバッグに買ったものを詰め込み、香耶は満足した気持ちでスーパーを後にする。