脱ぎ捨ててあった服を着て、再び、ホテル前の歩道に出た香耶はあたりを見回し、とりあえず、人の流れの多い方向へ歩き始めることにする。

パッと見て、飲食店のような場所は見当たらなかったけれど、こんな人通りの多い場所にそういったお店がないはずがない。

歩道に沿ってならぶ店を眺めていくと、明らかに周囲とは違う派手な黄色の店が目に飛び込んできた。

英語の看板はわからないけれど、窓に張られたメニューのようなチラシ大の紙に印刷されているのは、香耶も見慣れた日本の代表フード、お寿司のようだ。

オーストラリアにも、お寿司屋さんってあるんだ……

そう感心はしたけれど、今は、あまり食欲をそそられない。

ここまで来て、お寿司っていうのもねえ……

外国で食べる日本食って、あまり美味しくない、という話もきいたことがあるし……

他にお店がないなら仕方ないけれど、できれば、日本っぽいものじゃなく、これぞオーストラリア!っていうものを食べたい。

薄暗い店内の様子がちょっと不安だったこともあり、香耶はその店をひとしきり眺めただけで通り過ぎた。

そうして歩いて行くと、建物が途切れた。

目を上げれば、どこかおしゃれな交差点の向こうに見える赤い光。