着古したポロシャツに、ハーフパンツ。

どこかで見たような恰好の足元は、ビーチサンダルではなく、スニーカー。

ラグビー部員のような風体のその男性は、すぐそばで台車を停めると、香耶を一瞥し、置かれた荷物を積み始めた。

ホテルの制服は着ていないけれど、この男性が荷物を運ぶ担当者らしい。

受付の中の制服を着た人達が、こちらをチラ、と見ただけで何も言わないのを確認して、香耶はおそるおそるキャリーバッグを男性の前に差し出した。

言葉は発しなかったけれど、男性はすぐキャリーバッグに気づき、顔を上げて香耶を見る。

くっきりした顔立ちは珍しいけれど、鼻はあまり高くなく、全体に丸い印象の顔は、香耶が思うオーストラリア人とは違っていた。

もしかしたら、外国人なのかもしれない……

自分自身も、ここでは外国人だということを忘れ、香耶はあえて何も言わずにペコリと頭を下げた。
男性は、一瞬、不思議そうに香耶を見返したけれど、すぐに、わかった、というように、香耶と目線を合わせたままで頷いた。

「よかった……」

安心に顔がゆるみ、笑顔の浮かんだ香耶に、男性もチラッと白い歯を見せて笑う。

無言で通じ合えた高揚感のままに受付へ立つと、これまでに聞いた中で、最も早い英語が香耶を襲った。