グループごとに名前を呼ばれるので、乗客が何人で旅行するのかがわかってしまう。
家族連れが1組、女性2人が1組、あとはカップルで、男性が1人、女1人旅なのは、香耶だけのようだった。
「それじゃ、出発しまーす」
全員が乗り込むと、すぐに走り出した道は、思ったより細い。
そとの景色を眺めていると、信号で車が止まり、急なブレーキのせいで、香耶の体が大きく揺れた。
荷物はそれなりに丁寧に積んでくれていたけれど、運転はちょっと荒い。
ぐらんぐらん揺れる車の中で、香耶は近くにあった取っ手を掴んで体を支えた。
こんなに揺れる車に乗ったのは、ものすごく久しぶりだ。
日本では、バスもタクシーも、大抵、もっと運転は丁寧で、こんなには揺れない。
急ブレーキで揺れてしまった時なんかは、運転手さんに謝られたりするけれど、目の前でこちらを向き、補助席のような菅遺跡に座ったおじさんは、平気な顔をして、何も言うそぶりはない。
これも、オーストラリアでは普通のことなのかもしれないな。
苦笑した香耶は、おじさんのポロシャツの胸に、名刺大のネームプレートがつけられているのに気づいた。
手書きで書かれたらしい文字は、"Mickey"とある。