困った香耶が視線を落とすと、ちょうど、すれ違うところで、おじさんの足元が目に入った。

日に焼けた素足に、かなり履きつぶされたビーチサンダル。

半袖のポロシャツにハーフパンツ、という恰好も、ずいぶんラフだと思ったけれど、その下は、さらにラフだった。

発つ時の空港の様子はよく覚えていないけれど、日本での生活の中で、駅や空港など、これほど人が集まる場所で、仕事中にビーチサンダルの人は見たことがない。

これは……クールビズ?
それとも、仕事柄なのかしら?

そう考えて、香耶は、いやいや、とその考えを否定する。

日本でも、国内旅行のツアーのため、空港や駅で旅行会社の人を見かけたことはあるけれど、ここまでラフな人はいなかった。

歩きながら、周りに目を走らせると、似たような旗を持った人達も、似たようなラフなスタイル。
けっこう使い込んでいるような、ヨレッとした感じが多い。

Tシャツではなく、ポロシャツのような襟つきの服を来ているのが、ちゃんとしている、という基準なのだろうか?

なんだか知らないけれど、なんだか急に外国に来たんだという実感が湧いて、香耶は、くすっと笑い、列の最後、おいて行かれないように、と、急ぎ足で歩き始めた。