その中で、少し身の置き所がなくなった香耶は、辺りを見回し、すぐ近くに”Excanghe”と書かれた青い看板を見つけた。

そういえば、日本で両替するのを忘れていた。

現地のお金を全く持っていないことに気づいた香耶は、あわてて青い光の方へ走り、財布の中に入っていた日本の紙幣を差し出した。

事務的に返されたのは、差し出したよりも少し枚数の多いカラフルな紙幣と、数枚のコイン。
鈍い金色と銀色のコインのすぐ下にある紙幣はピンク色で、"5"の数字と、少し厳しそうな目をしたおばあさんが描かれている。

外国なのだから、お金の絵が違うのは当然だけれど、オーストラリアのお金には女の人を描く風習とかがあるんだろうか?

日本で香耶が普段使っている紙幣は、男の人が描かれたものがほとんど。
女性が描かれたものがあるのはもちろん知っているが、今、香耶が受け取ったこちらの紙幣には、その次の種類にも、女性の絵が描かれていた。

なんだか不思議な感じがしながらも、お金をまとめて財布に入れようとして、香耶はふと手を止める。

偉い人、なのかな?

見覚えのない、その顔をみながら、香耶は首をかしげる。

お金をつまんだ時の、指の滑り具合がいつもと違う。