ボディチェックを終え、人の流れに沿って歩いていくと、パッと照明が一段明るくなった。
それほど広くない通路の向こう側には、金属製の柵。
びっしりと柵をなぞるようにして待ち構えている人が思っていたよりもずっと多く、香耶は芸能人か誰かがいるのかと、後ろを振り向いた。
キョロキョロする香耶の周りを数人の外国人が通り過ぎていくが、特に目立つ雰囲気の人はいない。
そわそわしながらも、並ぶ人達を見てみれば、年齢も性別もバラバラ。
手作りのものらしい、何か英語が書かれた紙を持っている人もいる。
そうか、出迎えか、と、納得すると、きゃあ、と、横合いから若い女性の声がした。
悲鳴のような声の高さにびっくりして、香耶が顔を向けると、彼女は並んだ人垣に近寄り、柵越しに数人の男女と抱き合った。
口々に何かを言い合い、嬉しそうにしているのを見れば、何かがあったわけではなく、ただ再会の喜びの声だったらしい。
娘らしい若い女性と抱き合う、親らしい中年から高齢の男女を見ながら、香耶はほっと胸をなでおろして、歩き始める。
言葉がわからないのは、不便だ。
今更ながらに身に染みて、香耶は大きなため息をついた。