次に意識が目覚めたのは、何かをアナウンスする女性の声が耳に届いたせい。
深い睡眠から浮上した香耶は、ほとんど思考できない状態で意味のわからない外国語を遠くから聞こえる車の音のように聞いていた。
それが目覚めに繋がったのは、アナウンスの言葉が意味のわかる言語に変わったから。
まだ目を開けられない香耶は、ブランケットにくるまったまま、くぐもったように聞こえる機内のアナウンスに耳を澄ませた。
天気は、快晴。
時差は、1時間。
到着は時間通りで、遅れなし。
寝ている人も少なくなかった朝食前の時と違い、今はほとんどの乗客が起きているらしい。
ガヤガヤと、静かな数十人分のざわめきで聞こえない部分はあったけれど、貴重な日本語のアナウンス。
大事なところはちゃんと聞き取れたことは、よかったと言っていいだろう。
もっと寝ていたいけれど、このアナウンスがあったということは、そろそろ着陸の準備をしなければいけない。
よくは動かない重い頭でそう判断すると、香耶は、大きなあくびをして、顔をおおっていたブランケットを外す。
まだ閉じていたそうな重いまぶたをどうにか上げると、強い光が視界を刺すように飛びこんでくる。
外はアナウンス通りの快晴。
太陽は、もうすっかり昼間の強さで世界を照らしていた。