見ただけで既に少ない口の中の水分が吸われた気がして、香耶はひとくち、さっきもらったオレンジジュースをたっぷりと口に含む。
「うーん……」
うなりながら、袋を破ることもなく、そのお菓子をトレイに戻すと、横から、もう聞きなれた女性の声が飛び込んできた。
見れば、やはり、声の主は何度もお世話になった、さっきの金髪のCAさんがまだ通路にいた。
今は、反対側の席に座った白髪の老夫婦に、香耶のと同じグラスに入ったジュースを渡しているところのようで、座席に身をかがめるようにして何かを話している。
その様子を見て、そうだ、と思いついた香耶は、握ったままだったグラスの中身を一気に飲み干した。
「オ、オレンジジュース、プリーズ!」
空のグラスを差し出しながら、勇気を持ってそう言うと、ワゴンを押して移動しようとしていた金髪のCAさんは少し驚いた顔で振り向いて。
とても愛想良く、香耶から空いたグラスを受け取り、新しくオレンジジュースの入ったグラスを渡してくれた。
口の中の水分を増やせば、まあ……ビスケットも大丈夫でしょ。
ひとり頷いた香耶は、その後、トレイの上にあった食べ物を全てきれいに胃に収め、コーヒーも追加でお願いすることになってしまった。