この時期はオーストラリアへ旅行する日本人も多いし、日本語のできるCAさんが1人は乗っているはずだ、と、旅行会社の人は言っていた。

けれど、この飛行機に乗っている人は100人以上……多分、200人くらいいるはずだ。
空港で待っていた時、周りに何人も日本の人はいたけれど、そのほとんどがエコノミー席に乗っているようだ。

このあたりで日本人は、香耶1人だけ。

もし、日本語のできるCAさんがいたとしても、香耶1人だけのこちらではなく、日本人の多い方へ配属されたんだろう。

状況を考えれば、それは当然の判断だし、この飛行機はオーストラリアの会社のものなんだから、日本語が通じないと、不満に思う方がおかしい。

「エコノミーに、すればよかったかなぁ……」

仕方ない、そうわかってはいるけれど。
心細さに思わずつぶやいて、紅茶をトレイに置こうとすると、デニッシュの乗ったお皿に隠れるように小さな赤い袋があるのに気づいた。

紅茶のカップ&ソーサーを置いて、つまみあげると、それは日本でも有名なチョコ菓子で、その下にはもうひとつ、同じくらいに小さなお菓子らしい袋があった。

パッケージの文字は読めないけれど、描かれたイラストは茶色っぽい点々のついた、間違いのない形をしている。

「……ビスケット……」