「Suger?Milk?(お砂糖か、ミルクは入れますか?」
できれば、レモンティーが飲みたかったんだけど……
CAさんの言葉にないものを、きちんと伝えられる自信がない。
香耶は一瞬ためらった後、首を横に振って答えた。
「あー、ノー」
「Would you like something else?(他にも何かご入用ですか?)」
簡単な言葉でよかった、と安心していると、次は、最初のと違って知らない言葉ばかりの羅列だった。
CAさんから見ても、はっきりと香耶の表情はこわばったのだろう。
にっこりと微笑んだCAさんは、体を開き、後ろにあるワゴンに乗った、たくさんのピッチャーを示して、もう一度、似たような言葉をゆっくりと繰り返してくれる。
「Would you like something to drink?(他にも何か飲まれますか?)」
あ、ドリンク!
他に飲み物はいるかってことかな……?
合っているかな?と、少し不安げに小さく、香耶が首を横に振ると、CAさんはわかったというように頷いて、逆側の席の人に声をかけ始める。
ふう、と安堵の息を吐き、香耶は旅行会社の人へ、届かない苦情をつぶやいた。
「日本語できる人いるって言ってたのに、いないじゃない」