「Here you are(こちらをどうぞ)」
顔を上げると、さっきの金髪のCAさんが白いトレイを持って立っていた。
「あ、はい」
慌てて香耶が前の座席に留めてあるテーブルを出すと、するりと丁寧な仕草でトレイがセットされる。
テーブルにぴったりサイズの白いトレイに乗っていたのは、真ん中にジャムのようなものが入った長方形のデニッシュと、白いクリームのようなものがのせられたフルーツの盛り合わせ。
どちらも白い、つるりとしたシンプルな食器に乗せられていて、色どりもきれい。
レストランのような見た目に、そういえば、ここは普通の……エコノミーじゃなかったんだと思い出した。
なんて言ったかな、搭乗する時は確か、入口の画面にビジネス、と出ていた気がするけれど、ビジネスじゃあないはず。
たしか……そう、プレミアムエコノミー、だったかな。
今なら5,000円プラスするだけでランクアップできますよ、と、旅行会社の人に勧められるままに変更したのを思い出し、香耶は、なるほど、と指先でお皿の端をつついた。
席が違うと、食器まで違うのね。
そんなこと、全然知らなかった……
見たことのある、お弁当のような容器に入った食事が、イコール機内食だと思っていたけれど、実は違っていたらしい。