この時間じゃあ、太陽が昇るのも見れるはずよね。
社会人になってからというもの、朝型というよりは夜型の生活を続けて来た香耶にとって、5時は早朝も早朝。
むしろ、真夜中に近いとさえ思える時間帯だ。
子供の頃だって、それほど早く起きることはなかったと思うし、やはり、夜明けを見たのは今日が初めてだったと言い切っていい気がする。
「あたし、何時頃から寝ちゃってたんだろう?」
香耶の言葉に答えるものはないが、離陸してからの記憶がほとんどないことからすれば、なんとなくの予想はできた。
約4時間半……
理想の睡眠時間とは言えないけれど、久しぶりによく眠れたような気がするのは、しばらく睡眠不足が続いていたせいだろう。
少し頭痛に似た頭が重いような感覚はあるけれど、気分は悪くない。
さっき見た夢も、夢の名残りのせつない気持ちも、頭から消えなかった、あの人の顔も。
今は窓から差し込む光にはらわれたように、影をひそめている。
「うん、そう……」
自分に言い聞かせるように、小さく声に出してつぶやいて。
「もう……どうしようもないもの」
紙コップに入った冷たい水を飲み干すと、ひりつくようなのどの痛みも、少し和らいだような気がした。