「ヤマモト、さん……ですか?」

「…………え?」

思わず疑問符のついた声をあげてしまったのは、その声が……低い、男の人の声だったから。

おそるおそる振り向けば、そこにあったのは白いTシャツの平らな胸。

正確にはまっ平じゃなくて、胸筋のあたりと思われる場所が少し盛り上がっているようだけれど、それでも女性の体つきとは全然違う。

見上げれば、今まで雑誌やテレビでしか見たことのないような、モデルのように整った顔が香耶を見下ろしていた。


え?!男?!うわわ!キレイ!


きっと香耶も、テレビか何かの画面でこの顔だけをアップで見ていたならば、この人が男性だと思わなかっただろう。

けれど、かなり首をそらして見上げなければいけないこの長身と体つきは……間違いなく男性だ。

「はじめまして、ルカです」

ぽかん、と間抜けに口をあけたまま、驚きにかたまる香耶を見下ろして、ちょっと困ったようにルカさんの眉がセクシーにひそめられる。

「ヤマモトさんじゃ、ないですか?」
「へ?!」

ほんのりと自然なピンク色をしたキレイな唇から自分の名前が出たことに驚いて、香耶は素っ頓狂な声を出してしまう。

「あ、はい……私、山本です……」