「すっぴんなのは……もう仕方ない。今からじゃどうしようもないし、一人旅で気がゆるんでって説明すれば……うん、同じ女なら、そんな時もあるってわかってくれるでしょ!」
覚悟を決めて、スマイルマークの看板の見える場所に戻って辺りを見回すけれど、ルカさんらしき人は見つからない。
まだ着いていないだけだろうけど、なんだかちょっとほっとしてしまう香耶。
そういえば、外見とか、目印とか、訊いてなかったな、と、唯一の連絡手段であるメールの画面を開くと、新しいメールが届いていた。
『着きました』
簡素すぎる内容に驚くと同時に、心臓がドキンと跳ねあがる。
お湯が沸騰するように、緊張が一気に高まってあふれそうになるのが自分でもわかった。
人見知り……まではいかないけれど、それほどオープンな性格ではない香耶は、こんな風にプライベートで初対面の人と待ち合わせるのは初めてだった。
もちろん、仕事上ではいつも初対面の人に接しているし、営業スマイルもできるけれど、今は丸腰……普段は鎧として身に着けている、制服もメイクもない状態で心もとないのかもしれない。
「ふぅ……」
緊張を吐き出すように大きく息を吐いた時、ふいに、後ろから声がかけられた。