看板の英単語と実物が結びついて、思わずつぶやいたのを注文だと思ったのか、背を向けて作業していた女性がくるりとこちらを向いた。

「What can I get you?(ご注文はお決まりですか?)」

多分、注文を聞いているのだろうが、こっちは初めてだし、今やっとここで売っているのがパイだとわかったばかり。

香耶はなんと言っていいかわからず、ジェスチャーで伝えようと思い切り首を横に振った。

その思い切りがよかったのか、ふうん、という感じで奥に移動して行った店員さんに胸をなでおろして、香耶はショーケースの中に目をこらす。

ケーキとは違い、金属の網のようなものに乗せられたパイは、7種類。

隣のケースには、昨日、香耶も食べたサラダラップやドーナツ、マフィンのようなものもある。

「……でも、昨日も食べたしなぁ……」

視線を戻した香耶は、それぞれ顔の違うパイの前に置かれた、商品名らしい英語の書かれた小さな紙に一応、目を通してみることにする。

「ん?チキン?……クラシック、なんだろ……ビーフ……チキンとチーズ、チキン、何か……クリー……あ、カレー味か」

パイなんて、アップルパイとかチョコパイとか、甘いのがほとんどだったけれど、ここで売っているのはお食事系の、お肉が入ったパイらしい。