「はぁぁぁ……お腹減った……」

オペラハウスから10分程度歩いただけなのに、一気に空腹が押し寄せて、香耶は壁際でため息をついた。

ここまで来る途中にステキなカフェや、レストランぽい場所はあったものの、お値段にびっくりしてしまったのと、何よりステキすぎる店構えに1人では……と、気おくれしてしまったせいで入れなかったのだ。

それにこの場所は、来るときに見かけたチキンの匂いのする売店のそば……

香ばしい匂いが、香耶の胃を激しく刺激していた。

「うう……なんでこう肉とスパイスの匂いって、お腹に来るのよ……」

よろよろと駅の向こう側に出た香耶は、あたりを見回して大きなため息をついた。

日本の駅ではお馴染みの駅ビルも、飲食店街もない。

すぐに見つかるコンビニや、ファストフードのお店も見当たらず、視界に入るのは、石造りのステキな建物、準備中らしいバーのような店、それに大きなクリスマスツリー。

その景色はとてもキレイだけれど、今はそんなことより、お腹が空いていることの方が重要だ。

引き返して、揚げたチキンでもかじるしかないか、と、香耶が駅の中に戻ろうとした時、ふと、ポップなお店の看板が目に入った。