「はぁ……」

大きなため息をついて香耶が座り込んだのは、オペラハウスの直ぐ裏手。

芝生のような短い草が生えた、土手だった。

青い海と、そこに入る白く尖った屋根が一望できるこの場所は、オペラハウスのと海が見える丘公園、といったところだろうか。

周りには、香耶と同じように腰を下ろした人たちが、思い思いの時間を過ごしていた。

ため息の原因は、もちろん、この素晴らしい景色でも、オペラハウスでもない。

全くのノープランだったけれど、チケット売り場で日本語ツアーがあることを知ったおかげで、オペラハウスの中もちゃんと見学できたし、いろんな説明だってしてもらえた。

案内してくれた日本人のお姉さんは親切で、説明の内容もとても興味深かった。

あの特徴的な形は知っていたけれど、中はコンサートホールだったなんて知らなかったし。

オペラハウスの中は思っていたよりずっと高級感があって、各所に設けられたたくさんの大きな窓から見る景色はきれいだった。

夜にはバーが開き、シドニーハーバーの夜景を眺めながらお酒を飲んだりし、カクテルパーティなんかもあるらしい。

カクテルパーティって……カクテルを飲むパーティなんだろうか?