息をするのも忘れてその光景に見入っていると、近くに人の気配を感じて、香耶は夢からまだ覚めきらないような、ぽうっとした表情で振り向いた。
「water(お水です)」
あ、と、差し出された小さな紙コップを受け取ると、CAさんはにっこりと笑った。
「What do you do with breakfast?(朝食はどうなさいますか?)」
さっきのことがあったせいか、はっきりと発音してくれたおかげで、最後の単語はどうにか香耶にも聞き取れた。
「朝ごはん……あー、イエス」
反射的に答えた後に、久しぶりの空腹を感じた。
待ちの態勢でたたずむCAさんに、ハッと気づいた香耶は、慌てて前の席の背面にある網の中を探る。
「あーちょっと待って……確か、ここに……」
乗り込んだ時にもらったメニュー表は、食欲なんて全く感じられなかったから、とりあえず、目についたここに入れたはず……
さっきの水のやり取りと同じくらいの時間、そこを探って、ようやく見つけたメニューには見慣れた文字が並んでいた。
右側には日本語、左側には英語。
香耶は迷わず日本語の方に目を通し、目についたものを口にしていく。
「あー……オレンジジュース、と……あとは、フルーツ、ヨーグルト?サラダ……」