ドーンと大きな存在感で視界の半分を占領したのは、停泊している船。

いわゆる豪華客船と言うやつだろうか?

こちらに迫ってくるような威圧感のある船は、テレビで見るよりも何十倍も迫力がある。

これより高いビルだって見たことあるはずなのに、船という形のせいなのか…

香耶はその迫力にのけぞるようにして、その大きな豪華客船を見上げ、せり出した甲板の向こう側に小さく見える窓がたくさん並んでいる。

この大きな船にたくさんの人たちが乗り込む様子を想像して、香耶はほうっと大きなため息をついた。

テレビで見た事しかないけれど、こういう豪華客船は多分、お金持ちが世界一周の旅なんかで利用するものだろう。

庶民の私には一生縁がない乗り物だな…

落とした視線は船底まで下がって、そこでチャプチャプ音を立てる水が目に入った香耶は、ハッと気づいて体の向きを変える。

豪華客船のあまりの迫力に、一瞬頭からとんでしまっていたけれど、この湾の向こう側には目的の物が見えるはず。

船のチケット売り場らしき小さな小屋を避け、海と陸との境目にある申し訳程度の高さの柵に近づくと、何軒もの店とたくさんの人々が連なるその先に、白く光る尖った屋根を見ることができた。