ざっと髪をとかし、必要だと思われる物をいくつか移動用のバッグに入れて。
昨日、このホテルの前に着いた時とは全く違う顔で歩道に出た香耶は、ついさっき地図で見たとおり、左の方向へ進み始める。
この方向さえ間違わなければ、大丈夫。
昨日行ったスーパーのあるショッピングモールを過ぎて、そのまま10区画歩けば海に出る。
日本での通勤時間に比べれば、ずっとゆとりのある人の流れに乗って、香耶は周りを見回しながらゆっくりと大股で歩き始めた。
こうやって通りを歩けば、さすがに都会らしく、辺りは高層ビルだらけ。
昨日は見えていなかったけれど、歩道にかかった屋根から下がった看板もあるし、赤や黄色など派手な色で塗られたお店もある。
それでもなんだかおしゃれに見えてしまうのは、香耶が英語を理解できないせいかもしれないけれど。
頭上を通る連絡通路や、近代的なデザインのビルと同じくらい、歴史ある雰囲気の建物が目につく、というのも大きいだろう。
あとは、さっきから必ず視界に入る、自然なグリーン。
歩道の一部をくりぬくようにして植えられた、木々の緑がいいアクセントになっている。