「ふんふん……ここが駅で……こっちがチャイナタウン?へえ……どこにでも中華街ってあるんだ」
大きな公園と湾に挟まれた、この地域がいわゆるシドニーとして、観光客が歩き回る地域なのだろう。
高いビルの絵がいくつもあり、タワーっぽいイラストも、ホテルからそう遠くない所にある。
「ふうん……ここってやっぱり、街の中心街なのね……」
最寄りの駅は電車の起点として描かれているし……
そこまで考えて、香耶はふと、旅行会社から渡されたパンフレットのことを思い出し、荷物の中から渡された紙類をまとめて入れたポーチを取り出した。
「……あ!あった……やだもう……すっかり忘れてたよ……」
がっくりと頭を落とすのも、当然のこと。
香耶が今、見つけたのは旅行会社から渡された、シドニー支店の案内地図。
ホテルの地図と違う部分もあるけれど、きちんと名称が日本語で書いてあるものだ。
「……ああ、もう……」
思いつきで行動することの愚かさにがっかりした香耶は、そのままポーチの中身を全てぶちまけ、改めて確認することにする。