善は急げ、というか、今この勢いのまま連絡しないと、うだうだ悩んで1日を無駄にしてしまいそうな気がする。
香耶は高揚した気分のまま、プロフィールの下にある『Rucaさんに相談する』というメールマークのついた部分をタッチする。
『はじめまして。数日前から旅行で、シドニーに来ている山本と申します。いきなりで申し訳ありませんが、観光案内をお願いできないでしょうか?』
いろいろと書きたいことはあったけれど、まずは簡単に予定を確認する感じでいいだろう。
画面の文章をさらっと確認し、送信ボタンをタッチした香耶は、満足気にスマホを外出用の小さなバッグに入れると、ベッドに寝転び、ロビーで見つけた小さな地図を開いた。
英語で書いてある説明文はわからないけれど、建物や通りを示す簡単な英単語ならわかりそうだし、なにより地図は基本的に文字ではなく、絵だ。
何より、観光用に作られた小さな地図はごく簡単なもので、オススメの観光スポットっぽい場所や駅などの観光に利用しそうな場所は大きめのイラストで目立つように描かれている。
現在地を示しているだろう赤い印の上に、ホテルの名前を見つけて、香耶はウキウキと紙の上の小さな町のイラストを解読し始めた。