言葉が通じたわけではないだろうが、香耶の子供のような笑顔と仕草で、それが正解だとわかったのだろう。
金髪のCAさんはキュッと赤い唇を笑みの形に引き上げ、今度はゆっくりと、一音一音がはっきり聞こえるように言った。
「cold?(冷たいものですか?)」
「はい!あ、えっと……イエス」
わかる言葉でよかった……
香耶に小さく頷いてみせ、去っていくCAさんをほっとした気持ちで見送りながら、香耶がまた窓の外に目をやると、まぶしい光が目を刺した。
「…………あ……」
視界の右側からこぼれた光が照らす空は、さっきよりもずっと明るい色に変わっていた。
CAさんと香耶が必死のやり取りをしていたのは、きっとほんの数分のことなのに。
その短い時間にすっかり色を変えた空は、今は明るい水色とやわらかなピンクに染まっている。
さっきまでの青色は、空の端にほんのちょっと、その名残りを残しているだけ。
もう今はまるで印象の違う空がそこにあった。
じわじわと少しずつ、雲と空のずっと向こうから昇ってくる太陽が、世界を変え、明るい水色の空が、ピンクにオレンジ、金色……華やかな色に染められていく。
こんなきれいな空を……朝焼けなんて、見たのは何年ぶりだろう?
思い出そうとしてみたけれど、香耶の記憶の中に、こんなにもきれいな空は見当たらない。