目が覚める。

コーヒーの香りがする。

キッチンから物音がする。

彼女の姿が見える。落ち着く。

いつも通りの彼女だ。

夢は終わったのか、何日も寝ていた気分だ。

真水の中に絵の具を垂らした何か異物が残るそんな気分だ。悪くはない。

「おはよう」

「おはよう」

「よく眠れた?」

「ああ、今日、夢に出てきたよ」

「私が?」

「そう、めちゃくちゃかっこよかった」

「そう」

彼女は笑っていた。

「よく眠れた、何かスッキリした気分だよ」

「良かった」

彼女は朝食の準備をしていた。

「何作っているの?」

「もう少し待っててね」

クチャクチャと音が聞こえる。

「ん?」

彼女は一生懸命ひき肉を捏ねていた。