杏奈が渡した前社長の使っていた情報をまとめた資料が功を奏して、武藤製薬から離れようとしていた会社が無事に武藤製薬との取引継続を次々に頼み込んできた。

瑠衣が資料を読み漁り、武藤製薬以外の会社が使用している製品に使われている成分が最新の研究で発がん性の物質が含まれているとして、諸外国ではすでに使用禁止になり始めている成分だったことに気が付いた。

その情報をすぐに他社に広めたところ、新規の取引先も過去にないほど増えた。

「お見事です」
重役たちの会議で、瑠衣は社長としての地位を確かなものにできたのだと杏奈は実感した。
初めての会議では敵対視ばかりされていた瑠衣。
でも社員の名前を覚え、各部署の課題点も成果も把握していたところから社員たちは瑠衣の存在を認めようとし始めていた。そこに加えて、大きな業績アップにつながる発見をしたことで、社員たちからの信頼も勝ち取ろうとしていた。

ミーティングルームでの重役会議。
杏奈は重役たちに飲み物を出しながら、会議の雰囲気が前回と全く違っていることを感じうれしく思っていた。