「それから、お義父さんはお義母さんと離れていた間にもずっとこの積み立てをしていたらしい。」
「え?」
「これは杏奈の結婚資金にしてくれって、お義父さんから預かったんだ。」
「・・・」

箱に入っている通帳を一つ一つ手にとり開く杏奈。
その中には両親からの生まれて時からの愛情が感じられる。

「杏奈はご両親に心から愛されて育ったんだな。」
「・・・・うん」
「ご両親の想いの分も、大切にする。杏奈のこと。」

杏奈が母を一人で支えていると思っていた時。
少し離れたところで杏奈の父も杏奈の母も、杏奈自身のことも支えようと必死だったのだ。

「杏奈がお母さんの医療費で負担してきた分はお義父さんが全額返すって言ってたんだ。でも、それは俺が断った。」
「・・・」
「お義父さんだってこれから定年退職を迎えるだろ?そのお金はお義父さんのために使ってくださいってお願いしたんだ。」
「・・・瑠衣」