杏奈は大学を卒業してから俗にいう”大手”の製薬会社の秘書課に入社した。
仕事は主に社長専属秘書の補佐にあたる業務だ。

社長は60代。この”大手”と呼ばれるまでに製薬会社を大きくした人物だった。

この製薬会社は新薬の開発研究で業界ではかなり有名だ。
社長が若かりし頃に自ら研究に加わった新薬の開発がこの会社を大きくした。

今でも新薬の研究部門にはかなり力を入れていて、次々に新しい研究の成果を発表しては注目を集めている。

杏奈は入社してからずっと秘書課で社長秘書の補佐をして働いてきて、ほかの社員よりも社長とは近い距離で仕事をしてきた。

社長は杏奈のことを娘のようにかわいがってくれている。

そんな社長から直々に伝えられた新年度からの人事。