「ちょっこれどっかにかけといて」
脱いだ服を杏奈に渡して、杏奈が渡した部屋着を着るとすぐに料理を再開する瑠衣。

杏奈は昔のように全く飾らない瑠衣に、昔のように自分の胸もどきどきしていることに気づかないふりをすることに必死だった。

杏奈の持っている中で一番大きなサイズの部屋着でも瑠衣にはかなり小さくて、ズボンの裾から出た長い脚が目立つ。

ハンガーにかけた瑠衣のシャツもスーツも瑠衣の匂いがして、その大きさにも杏奈はどきどきした。

「横になってろ」
手元から視線を移さないまま言う瑠衣。
「その前にシャワー浴びてきます。」
昨日からシャワーを浴びていなかった杏奈がそう言って浴室に向かおうとすると瑠衣が「ダメに決まってんだろ?熱上がるぞ?」と険しい表情で杏奈に近づいた。

「でも汗かいたから気持ち悪いし」
「だめ。絶対にぶっ倒れる。どうしても入るっていうなら体拭こうか?」
瑠衣の冗談に杏奈は「ばか」と思わず昔のノリでつっこんでしまった。