鈍い音とともに吹っ飛んでいくチンピラたち。
さらりと揺れる髪をうっとうしそうにかき上げる獅子。
安堵と恐怖でへなへな座り込んだわたし。
「あ、ありがとう、ございます」
「で、あんた誰」
「榛名。榛名、灯里です。
……あなたは、」
なんで驚いた顔をしたのか、このときのわたしはわからなかった。
だってたまたま助けてもらったのが、名の知れた暴走族の総長とか。
だれが想像できる?
あとから知った名前と正体。
衛藤 廉士。
ここら一帯を支配する暴走族の総長。
狙うものと狙われるもの、
護られるものと護るもの。
「えっと、あの、その……」
「ぐじぐじしてんなよ。
言いたいことあんならはっきり言え」
「わたし、自分の名前以外なにも覚えてないんです。お願い助けてください!」
「……んなこと俺に言うんじゃねーよ」
記憶喪失の少女と最強と謳われる少年。
これはたった一夜の、愛の物語。